コールセンター運用に欠かすことのできない存在であるSV(スーパーバイザー)。日々の数値管理だけでなく、オペレーターのモチベーション管理やリーダーなど管理者への指導など、まさにセンターを支える重要なポジションだといえます。

そこで今回は、コールセンターにおけるSVの育成法と、それにともなう課題について解説します。

1.企業がSVを雇用するパターン

コールセンター SV育成 画像①

コールセンターを運営する企業がSVを雇用するパターンは以下の2つしかありません。

①現場からのたたき上げ
②中途採用

現場のSVとリーダーを対象に前職を聞いたアンケート結果は以下の通りです。

図表① 前職※出典:月刊コールセンタージャパン編集部/『コールセンター白書2020』/株式会社リックテレコム/東京/2020.10.16/P38

この結果から、SVやリーダーと呼ばれる管理者の多くは、現場のオペレーター経験者からのたたき上げが多いことがわかります。

たたき上げが多い理由として考えられるのは、センター内における人間関係が構築されている、業務内容を理解している、オペレーターとしての実績がある、などの要素が関係しているといえるでしょう。

また、「異なるコールセンターのSV/リーダー(14%)」のように、他社でSVをしていた、またはリーダーとしてのマネジメント経験があるなど、コールセンター経験者を雇用する傾向にあります。

SVはコールセンター運用において重要なポジションであることから、中途採用の際も、コールセンター経験者であり、かつ管理者としてのスキルを持った人材が必要とされているのです。

2.コールセンターのSVに求められる能力

コールセンターにおけるSVの役割は数値管理や人材育成など多岐に渡ります。
SVの業務を担ううえで最低限必要な能力を3つご紹介します。

①オペレーター以上の実務能力

SVはオペレーター以上の実務能力を持っていることが大前提です。
その理由として、SVは部署の最終責任者という役割を担っているからです。

重クレームなどのオペレーターで対応が難しい問い合わせに対して、顧客への対応はもちろん、その他の処理においてもオペレーター以上の能力を持っていなければ、最終責任者としての務めを果たすことができません。

「企業がSVを雇用するパターン」の章でお話しした、現場からのたたき上げでSVなどの管理者になった人の割合が多い理由も、実務能力の高さを認められた結果だといえるでしょう。

②コミュニケーション能力

SVはオペレーターやほかの管理者との信頼関係を構築しなくては業務を円滑に進めることはできません。

そのため、SVにはオペレーターや管理者へ継続的にスキンシップを取れるコミュニケーション能力が重要となるのです。

また、他部署と連携して業務を進めていく場面も多々あるため、他部署との信頼関係を築くのも、SVのコミュニケーション能力の見せどころです。

③的確な指示をするための判断力

SVはオペレーターや管理者に対して業務上の指示をする立場です。
そのため、発生した問題に対する最終判断をSVが行います。

簡易的な判断であれば現場の管理者へ委ねてもよいですが、重クレームへの対応や部署の運営に関する事柄については、SVの責任のもとで判断しなくてはなりません。

重要な判断を迫られる機会が多いことから、SVには広い視野で問題を捉え判断する能力が必要となるのです。

3.SV育成のコツは?研修やサポート体制の充実がカギとなる

SVの育成に欠かすことのできない項目は多々ありますが、その中でも重要となるものを3つ解説します。

①SV研修の体制作り

企業によってSV研修の実施方法は異なりますが、全体としてあまり研修体制がよいとは言えません。

「コールセンター白書2020」のアンケート結果によると、38.4%が「とくに研修やトレーニングを受ける機会はなかった」と回答しています。

図表② SVリーダーになるための研修やトレーニング※出典:月刊コールセンタージャパン編集部/『コールセンター白書2020』/株式会社リックテレコム/東京/2020.10.16/P39

SVの役割の広さを考えれば、就任時の初期研修や先輩SVとのOJTは確実に行うべきであることから、研修体制の確立は必須といえるでしょう。

②システムを用いた作業の効率化

SVはKPI管理やオペレーターの作業効率を監督する役職です。
日々の身体的・心理的な負担を軽減させ業務を円滑に進めるうえで、システムの導入はSV育成においても欠かせません。

例えば、オペレーターの通話回数や稼働率を集計し表示してくれる「オペレーターレポート機能」や、オペレーターへのフィードバック時に活用できる「全通話録音機能」などが挙げられます。

SV業務の効率化やオペレーターを客観的に評価する材料集めができるため、新米SVを育成する際もシステムを積極的に活用しましょう。

③心理的なサポートができる体制を作る

SVの業務は大きな責任をともないます。
目標達成へのプレッシャーやオペレーターとの人間関係など、悩みは尽きません。

そのため、新米SVが精神的に参ってしまわないようサポートできる体制が必要です。

身体的・心理的な負担から離職につながるケースもあるため、悩みを相談できる窓口を設ける、業務量の見直しを定期的に行うなど、負担を軽減させる体制の構築や施策を講じましょう。

4.SV育成で直面する課題

コールセンター SV育成 画像②

SVを育成するうえで直面する課題には以下の2つが挙げられます。

①SVへ昇格したがらない

現場のオペレーターやリーダーはSVが大変な仕事だと理解しているため、SVになりたがりません。

そのため、業務量の調整や役職に見合った賃金を提示するなど、SVが魅力的な立場であると認識してもらえるような工夫を企業側が行わなければならないでしょう。

②SVの業務を担える人材がいない

SVには、業務スキルやコミュニケーション能力など、さまざまな資質が必要であるため、その基準を満たした人材を見出すのはとても困難です。

というのも、オペレーターとして優秀だからといって、SV(管理者)として優秀だとは限らないからです。

業務スキルが人より優れていても、SVとして必要なコミュニケーション能力や判断力に欠けていると、管理者としては不十分です。

そのため、企業によってはリーダーの時点からSV業務の一部を代行させ、ある程度の業務スキルを身につけた時点でSVへ昇格させる方法も取られています。

SV育成の前段階として「SVに適した人材を育成する」という方法も、ひとつの手段と考えられているのです。

5.優秀なSVが育つ環境を整える必要がある

コールセンター SV育成 画像③

優秀な人材をSVに据えるには、SVを育成する環境整備からはじめなければなりません。

研修やサポート体制、各種システムの導入など、社内で実施できる施策を検討してみましょう。

具体的なSV育成のノウハウを構築することは未来のセンター運営に大きく関わってきます。

この機会に、SV育成の方法を再考してみてはいかがでしょうか?

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