オペレータの独り立ちに向けて実施される研修であるOJT。
OJTの実施にはさまざまな注意点があり、きちんとした対策をしなければ、短期離職につながってしまうケースもあります。
そこで今回は、「コールセンター研修でOJTを成功させる方法」について解説します。
1.OJTはオペレータが直面する最初の関門
コールセンターで働きはじめた新人オペレータにとって最初の関門となるのがOJTです。
この章では、現場で実施されるOJTの概要についても触れていきます。
OJTの概要
OJT(On The Job Training)とは、新人オペレータのデビュー判定(独り立ち)前に実施される実践型研修のことです。
コールセンターで実施されるOJTでは、新人オペレータひとりにつき、ベテランオペレータ、または管理者が指導役として付くスタイルが一般的です。
OJT開始直後はベテランオペレータ、または管理者が横付けでモニタリングしながらサポートしますが、期間の経過とともに新人オペレータひとりで対応を行わせ、より実践に近いかたちを身に付けさせます。
OJTが新人オペレータの直面する最初の関門である理由
OJTは新人オペレータが最初に直面する関門のひとつとされます。
その大きな理由は「顧客対応への不安」です。
コールセンターにおけるOJTでは、簡単な案件のみを新人オペレータへ割り振るのは難しく、特にどのような入電がくるかわからないインバウンド業務では、さらに割振りが困難です。
そのため、OJT中に受電したコールがたまたまクレームである可能性も排除できず、業務に慣れていない新人オペレータには、常に緊張が強いられる状況となってしまいます。
その結果、重圧に耐えられなくなりOJTの途中で退職するオペレータも多いことから、新人育成における課題のひとつとされています。
2.OJTの失敗は離職へつながる大きな要因となる
コールセンターを離職する要因はさまざまですが、新人オペレータが早期離職する理由にあげられるものとして、「研修におけるサポートが充実していない」というものです。
通常、新人オペレータはシステムの使用方法や商品・サービスの基礎知識を学ぶ座学から研修がスタートし、そこから徐々にスクリプトの読み込み、先輩オペレータのモニタリング、ロールプレイングなどと進んでいきます。
OJTは新人研修の最終段階にあたるフローであることから、これまでの研修で学んだことを発揮しなければ務まりません。
しかし、研修内容が曖昧であり、OJT時のサポートが不十分だとどうなるでしょうか?
OJTの段階からミスが多く出るようになり、しまいには業務自体が嫌いになってしまうのは想像にたやすいことです。
短期離職が発生すると、研修に要した期間や人員が無駄になることから、新人研修の最終段階であるOJTは特に注意が必要であり失敗が許されないのです。
3.OJTの成功にはこのポイントを押さえましょう
OJTを成功させるポイントを3つご紹介します。
現在の運用と比較し検討の材料にしてみてください。
①初期研修期間を適切に設定する
「コールセンター白書2020」によると、オペレータの初期研修期間について質問したアンケートで以下の結果が出ています。
※出典:月刊コールセンタージャパン編集部/『コールセンター白書2020』/株式会社リックテレコム/東京/2020.10.16/P66
本書の結果では、1ヵ月程度~2ヵ月以上とした割合の合計が、全体の約6割強を占めていることがわかります。
一方で、「特に初期研修は実施していない」「3日間~1週間」など、まったく初期研修を実施していない、または短い期間のみ行っている企業も見受けられます。
この背景には、扱っている商品やサービス、勤務形態(短期間のスポット勤務などもある)、人的リソース不足により研修に時間や人員が割けないなど、さまざまな要因があることでしょう。
しかし、初期研修期間を適切に定めなければ十分な知識を学ばせられず、OJTへ移行しても、新人オペレータへ負担をかける結果となってしまいます。
そのため、現在の初期研修期間が適切であるか、現場のオペレータの意見などを参考に再度検討してみるとよいでしょう。
②業務マニュアルやFAQを最新版へ更新する
OJTを成功させるには、オペレータ向けの業務マニュアルやFAQを常に最新版へ更新する手間が必要不可欠です。
「コールセンター白書2020」によると、オペレータ向け業務マニュアルの更新頻度は以下のようになっています。
※出典:月刊コールセンタージャパン編集部/『コールセンター白書2020』/株式会社リックテレコム/東京/2020.10.16/P72
続いて、オペレータ向けFAQの更新頻度は以下の通りです。
※出典:月刊コールセンタージャパン編集部/『コールセンター白書2020』/株式会社リックテレコム/東京/2020.10.16/P72
これらのデータから、業務マニュアル、FAQともに高頻度で更新している事業所が多いことがわかります。
ですが、「一応用意している」や「用意していない」などの回答もあり、企業ごとに認識のばらつきがみられます。
業務マニュアルやFAQは、OJT中の新人オペレータにとって教本のようなものです。
内容に誤りがある、情報が古いなどの理由からお客様への回答に間違いが生じても、新人オペレータはその真偽を判断できません。
そのため、業務マニュアルやFAQは常に最新版へ更新し、情報が古くなることがないよう努める必要があります。
③「保留」「折り返し」「転送」などの指示伝達方法を事前に決めておく
OJTでお客様対応をしていると、新人オペレータが業務マニュアルやFAQを確認しても回答困難な質問が入ることもしばしば。
そのようなときは、保留やベテランオペレータへ転送するのが一般的ですが、お客様対応に不慣れな新人オペレータは、どの対応が適しているのか判断に困ってしまいます。
そのため、保留・折り返し・転送などが必要な場合、OJTの担当をしているベテランオペレータや管理者から、どのようにその指示を伝えるのか事前に新人オペレータと共有する必要があります。
例えば、耳元でささやく・筆記で指示を出すなどがシンプルで有効な手段です。
事前に指示出しの方法を共有することで、いざというときにパニックにならず、スムーズにOJTを進められます。
事前の指示出し方法の共有をしている事業所は意外と少ないので、一度試してみてはいかがでしょうか。
4.OJTの成功はオペレータの新たな成長のきっかけとなる
OJTの成功は新人研修の最終段階を突破したことになり、新人オペレータの業務への自信につながります。
事業所ごとで担っている業務が異なることから、OJTの実施方法に絶対的な正解はありません。
ですが、短期離職やモチベーション低下を抑えるためにも、事業内容にあったOJTの実施方法の模索が必要です。
新人オペレータが成長するきっかけとなるOJTをより良いものにしていきましょう!
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