コールセンターにおけるカスタマーハラスメント(カスハラ)とは? 原因と具体的な対策を解説近年、「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が大きな社会問題となっています。特にコールセンターでは、理不尽な要求や暴言によりオペレーターが深刻なストレスを抱え、離職率増加や業務効率の低下が深刻化しています。

本記事では、カスタマーハラスメントの現状や影響、さらにコールセンターで実践できる具体的なカスハラ対策について解説します。

1.カスタマーハラスメント(カスハラ)とは

厚生労働省が公開している「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」によるとカスハラとは、以下と考えられています。

顧客等からのクレーム・言動のうち、該当クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの

厚生労働省:カスタマーハラスメント対策企業マニュアルより

『執拗に無理な要求を繰り返す』『オペレーターを威圧するような態度をとる』『業務と関係のない個人の人格否定などの攻撃を行う』など、顧客が常識を超えた方法や態度で苦情や要望を伝え、オペレーターが心身に大きな負担を受けたり、業務が滞ってしまう行為はカスハラになりえます。

また、厚生労働省が2024年1月に企業向けに実施したアンケート(「職場のハラスメントに関する実態調査について」)では、「過去3年間に顧客等からの著しい迷惑行為に該当すると判断した事案の具体的な内容」として、コールセンターでも良く聞く事案を、カスハラと判断している企業が多いことがわかります。

過去3年間に顧客等からの著しい迷惑行為に該当すると判断した事案の具体的な内容(対象:過去3年間に顧客等からの著しい迷惑行為に該当すると判断した事案があった企業(n=1,880))

こういった行為は、以前から「重クレーム」として認識されてきました。ただ、「オペレーターの案内ミス」や「他部署での処理漏れ」など、企業側に原因があるケースも少なくありません。そのため、企業側が「自分たちに非がある以上、顧客の要求に応じるしかない」といった対応を続けた結果、顧客の理不尽な態度を助長してしまう事例も見受けられます。このような背景が、現在のカスタマーハラスメント問題の一因になっていると考えられます。

カスハラという言葉が広がったことで、原因がなにであろうと顧客がハラスメントと思われる行動をとった場合、それは不適切な行為だと顧客もオペレーターも共通の認識にできるようになりました。この変化は、離職率が高いコールセンター業界における人手不足問題の解決に向けた重要な一歩と言えるでしょう。

2.カスハラが及ぼす影響とは

先ほどと同じアンケートより、「過去3年間に顧客等からの著しい迷惑行為で被った損害や被害」についての結果が以下になります。

過去3年間に顧客等からの著しい迷惑行為で被った損害や被害(対象:過去3年間に顧客等からの著しい迷惑行為に該当すると判断した事案があった企業(n=1,880))

カスハラがもたらす影響は、単に労働者の精神的な負担にとどまりません。労働環境が悪化することで、業務効率が低下する、従業員の離職率が上昇する、さらには企業の評判にも悪影響を与える可能性があります。
特にコールセンター業界では、人材確保や教育にかかるコストが高いため、一人ひとりの従業員が受ける影響が大きな課題となっています。
さらに、カスハラを放置すると、他の従業員にも波及効果が及び、職場全体の士気が低下することもあります。従業員が安心して働ける環境を整えることは、顧客満足度を高めるだけでなく、企業の持続可能性にもつながる重要な要素です。

3.現在のコールセンターの取り組み

2024年は様々な自治体がカスタマーハラスメントへの対策を打ち出し、企業や公共機関における従業員の安全と精神的健康を守る取り組みが一層強化されました。
具体的には、相談窓口の設置や啓発活動の推進、さらにはハラスメント行為に対する法的措置の強化が進められています。

各コールセンターでも同様にカスハラへの取り組みが強化されています。

以下のアンケートは、2023年と2024年にコールセンター運営企業(アウトソーサー除く。業務委託している委託元は対象。)を対象に実施された、「カスタマーハラスメントと判断するための定義や基準について」のアンケート結果になります。

『コールセンター白書2023』カスハラ定義参考:月刊コールセンタージャパン編集部/『コールセンター白書2023』/株式会社リックテレコム/東京/2023.11.21/P79


『コールセンター白書2024』カスハラ定義

 

参考:月刊コールセンタージャパン編集部/『コールセンター白書2024』/株式会社リックテレコム/東京/2024.12.6/P78

アンケート結果によると、「カスハラの定義を明確にしているコールセンター」は33%から45%に増加し、一方で「カスハラの定義を設けず、全ての案件に真摯に対応するよう指導しているコールセンター」は11%から4%に減少しました。この結果から、カスハラに対する意識の向上と、オペレーターを守る取り組みが進んでいることが伺えます。

また、カスハラと判断した場合の対応ルールを聞いた結果が以下になります。

カスハラと判断したコールやメールへの対応ルール(複数回答あり)参考:月刊コールセンタージャパン編集部/『コールセンター白書2024』/株式会社リックテレコム/東京/2024.12.6/P79

オペレーターの判断で通話を切ることを許可しているコールセンターは少なく、多くの場合、スーパーバイザー(SV)や上席者への転送・相談を経て対応する体制が取られています。たとえカスハラの定義が明確に共有されていても、現場では判断に迷うケースが依然として多い状況が伺えます。

また、法務部門など他部署への転送をルール化しているコールセンターも増加傾向にありますが、全体としてはまだ少数派に留まっています。他部署との連携が必要となることから、ルールの策定や運用が難しい課題として残っているのかもしれません。

カスハラ対応における適切なルール作りや現場での判断基準の整備は、今後のコールセンター運営における重要な課題と言えるでしょう。

4.コールセンターの具体的なカスハラ対策

基本的なカスハラ対策については冒頭にご紹介した「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」をご参照ください。

こちらのページでは、コールセンターにおけるカスハラ対策の具体的な方法をご紹介します。

①応対ランク分けによるエスカレーション

【目的】
ハラスメントのレベルに応じて対応を明確化し、現場の負担を軽減。

【対策例】
・低レベル(軽度の暴言・不満):スクリプトを活用し、基本的な謝罪や説明で対応。
・中レベル(執拗な要求、感情的な批判):スーパーバイザーや専門チームにエスカレーション。
・高レベル(暴言、脅迫):即時通話を終了し、後日文書で対応(必要に応じて法務部門を関与)。

②緊急対応ボタンの設置

【目的】
即座に管理者の介入を促し、オペレーターが「一人で抱え込まない」環境を作る。

【対策例】
・オペレーターが一人で対処できない場合、ワンクリックでスーパーバイザーに通知。

③通話制限のガイドライン設定

【目的】
長時間にわたる不適切なクレームや威圧的な行為を制限する。

【対策例】
・一定時間以上の通話を「適切な部署へのエスカレーション」として切り上げる。
・事前に明確な通話制限ポリシーを設け、必要に応じて文書で通知する。

④通話録音の活用

【目的】
威圧的な発言や暴言を客観的に記録し、証拠として活用する。

【対策例】
・顧客との通話開始時に「この通話は品質向上のため録音しています」と通知する。
・不適切な発言があれば録音をもとに顧客と再度対応を検討する。

⑤ブラックリスト管理

【目的】
過去にハラスメントを繰り返した顧客に対応する際のリスクを軽減する。

【対策例】
・問い合わせ履歴に「注意顧客」としてフラグを設定。
・特定の顧客には事前に対応を限定する方針を共有する。

⑥カスハラ研修の実施

【目的】
スタッフが心理的負担を減らし、冷静に対処できるスキルを身に付ける。

【対策例】
・ロールプレイ形式で、実際のハラスメント事例を再現。
・ストレスへの対処法や適切な言葉遣いを学ぶ。

⑦オペレーターの心理的ケア

【目的】
ハラスメントにより受ける精神的負担を軽減する。

【対策例】
・定期的なストレスチェックと面談を実施。
・ハラスメント対応後はリフレッシュのために短い休憩を設ける。

⑧ピアサポート体制の構築

【目的】
オペレーター同士で心理的負担を軽減し、支え合う環境を作る。

【対策例】
・ハラスメント対応後、同僚やスーパーバイザーに相談できる仕組みを用意。
・定期的にピアサポートの場を設け、経験を共有。
※ピアサポートとは:同じような共通項と対等性をもつ人同士の支え合いを表す言葉

 

これらの対策はコールセンターの現場での実用性を重視しており、現場スタッフの安全と業務効率の両立を目指しています。

カスハラ対策には他にもさまざまな方法が考えられます。ぜひ、自社のコールセンターに適した対策をご検討ください。

5.オペレーターが安心して働ける環境で、顧客満足度も向上

カスハラはコールセンター業界において深刻な課題であり、オペレーターのメンタルや業務効率に大きな影響を及ぼします。

近年では、各自治体もカスハラ問題に積極的に取り組んでおり、東京都では全国初の「カスタマー・ハラスメント防止条例」が制定され、2025年4月から施行されます。このような取り組みを通じて、社会全体でカスハラ撲滅を目指す流れが広がっています。

現在、多くのコールセンターがガイドラインの策定やトレーニング、技術の導入など、さまざまな取り組みを進めています。特に、録音機能やAIを活用したコール分析システムなどの最新技術は、カスハラ対応を効率的かつ効果的に進めるための重要な手段です。

カスハラへの対応を進めることは、オペレーターが安心して働ける環境を作り、結果的にオペレーターの定着率向上や人手不足の解消にも繋がります。このような取り組みは、サービス品質の向上だけでなく、顧客満足度の向上にも寄与することが期待されます。企業にとってカスハラ対策は、今後ますます積極的に取り組むべき課題と言えるでしょう。

6.BlueBeanは、オペレーターが安心して働ける機能を搭載

BlueBeanはインバウンドもアウトバウンドも対応している、オールインワンのコールセンターシステムです。
カスハラ対策としてご紹介した、「②緊急対応ボタンの設置」「④通話録音の活用」「⑤ブラックリスト管理」に活用できる機能をご紹介します。

対応中でもSVに通知ができるヘルプボタン

BlueBeanのオペレーター画面には、ヘルプボタンがあります。ヘルプボタンを押せば管理者に通知が行き、顧客と通話をしながら、管理者にモニタリングをしてもらうなどの対応が可能です。

対応中のオペレーターの通話内容がわかり指示もできる、モニタリング・ささやき

BlueBeanは管理者向け機能にモニタリングとささやき機能があります。通話中のオペレーターと顧客の会話をリアルタイムで聞くことができるので、オペレーターは聞いてもらっている安心感をもって対応を行えます。また、オペレーターにしか聞こえないささやき機能を使えば、重クレームに発展した場合も「転送して」や「切電して」など即座に指示ができます。

通話内容は自動で全通話録音

BlueBeanを介して行われた通話は全て自動で録音されます。顧客の暴言や脅迫などの事実確認ができる他に、オペレーターの対応に間違いがなかったか後から確認ができます。

オペレーター画面から顧客の情報がわかるCRM機能

電話で繰り返しカスハラを繰り返す顧客には、顧客情報にオペレーターがわかるように印をつけておき、事前に対策を検討することが有効です。また、検討した対策を履歴等に残しておけば、電話が来た場合にもあわてず対応を行うことができます。

ご説明したBlueBeanの機能は「CRM機能:オペレーター画面」からご確認いただけます。